母さんへ

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大学は思い描いていたものとは少し違った。 特に友達もできなかったし、キャーキャー盛り上がるふうでもない。 それでも、無事に三年間通い続け、残すところちょうど一年を迎えた春の出来事でした。 わたしは一人暮らしで、毎回学食を買う余裕はない。 だからお弁当を持参していた。 一緒に食べる人もなく、一人で日の当たる小さなテーブルを占領して。 …その日は特別で、珍しく寝坊してしまったわたしは、お弁当を詰める暇もなく、学食を買うことにしたのだ。 「…どうしよ」 食堂はいつもながらの混み具合。 いつもなら学食を買う列に並ぶ手間がなかったわたしは、すぐに空いているいつもの席に直行できたのだけれど。 やっと並んで買ったカレーうどんと烏龍茶(水筒も忘れた)の載ったトレーを手に、うろうろ歩き回るわたし。 食事の終わっている生徒たちは、ごみをもてあそびながら話に没頭している。 ―――早くどいてよね…。 困ったなぁ。 お腹がぺこぺこのわたしには、カレーの香ばしい香りとこの混み具合はきつい。
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