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「飯食う?まだ寝る?」
この声を聞くとより思う。目の前にいるこの若い男が死神だ。
「迷惑、かけてすいません…できればご飯、食べたい」
視線をあわすことなくそう言うと、死神は立ち上がった。
すぐ部屋に料理が運ばれる。
お粥に焼き鮭をほぐしたものが乗っていた。それに肉じゃがと味噌汁。
…
旨すぎる!このちょうどいい味付けに感動した。
今までワンナイトでお世話になったときに食べさせてもらった手料理は、どれも味が濃くて自分には合わなかった。
そんな感動を表に出すことなく、味噌汁を啜ったとき、死神が聞いてきた。
「薄い?」
首を振り、味噌汁に箸を入れ具を探ると、好物が入っていた。
「麸、好き」
出された料理を食べ終え箸を置くと、死神はそれを持って部屋を出ていく。
しかし、程なくしてすぐに戻ってきた。
「着てた服、まだ乾いてないからそれ着て」
そう言い、服を枕の横に置くとまた部屋を出ていく。
服に手を伸ばし、袖を通した。
おそらく死神の服だ。だけど、洗って干したあとのものに当然死神そのものの匂いはない。
裸で毛布にくるまっていたほうがよっぽどいい。
パンツくらい履くべきだとは思ったが、今は死神のこの匂いに、全身包まれていたかった。
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