99人が本棚に入れています
本棚に追加
毛布を頭まで被って思いきり息を吸い込む。
「変態…」
でも好きなのだ。この匂いが。
毛布にくるまりながらごろごろしていると、今度は甘い匂いがしてきた。
懐かしい匂い。
覚えている過去で一度だけお母さんが作ってくれたホットケーキと似てる。生焼けだったけれど。
ガチャッとドアを開けて死神が入ってきた。
すると部屋にさっきよりも甘い匂いが入ってくる。
「甘いもの好き?」
甘いもの…。
もしかするとこの匂いの正体を食べさせてもらえるのかと思い、頷いた。
一旦部屋を出た死神は、手に皿を持ってすぐに戻ってきた。
皿に乗っているものが何なのか分かった途端に胸が踊る。ずっと食べてみたいと思ってたクレープだ。
フォークでつついて一口食べる。
おいしい…。
生焼けホットケーキとは比べ物にならないくらいおいしい。
比べるのも失礼だけど。
食べ終わりフォークを置くと、タイミングを見計らっていたかのように切り出された。
「家連絡したら?携帯貸す」
普通はそうだ。家のことが出てくるに決まっている。
「親いない」
「親戚は?」
(面倒なことに巻き込まれるのは嫌だ)
「いない」
巻き込みません。すぐ出ていきます。
「名前は?」
「律」
最初のコメントを投稿しよう!