99人が本棚に入れています
本棚に追加
(りつ…どんな字だ。普通に律するの律か)
「そう、それだよ」
しまったと思ったがもう遅かった。もう一つの声に答えてしまっていた。
「あ?ああ、そうか」
(勘のいいやつだな)
勘…。そう捉えてもらえて良かったと思った。
今までたくさんあった。ミスをして心の声に答えてしまったこと。
その度に気味悪がられ、気づくといつも一人ぼっちになっていた。
だから今ではもう気にしていない。ミスをしたらしたでしょうがない。気味悪いと思われて終わりでいい。
だから、今さっき感じた焦りは久しぶりだった。
きっと俺は、死神には気味悪いと思われたくないんだろう。
「死神…っじゃない。あなたは?」
「正一」
しょういち…どんな字書くんだろう。
それを聞こうと口を開いたタイミングで、逆に質問された。
「服、気に入らなかった?」(なんでいつまでも裸なんだよ)
「裸でいるの好き。ねぇ、名前、どんな字?」
匂いがないから嫌だなんて答えるわけにいかない。適当に理由を述べて、聞きたいと思っていたことを質問した。
「正しいに、漢数字の一」(裸族ってやつか)
「そう、裸族…」
答えた瞬間、しまったと思った。
「さっきからなんかさ…」
嫌だ…聞きたくない。言わないで。
死神からは言われたくない。
次に言われる言葉が怖くていてもたっても
いられなかった。
まだふらつく体で急いで貸してくれた服を着た。
「お世話、ありがと」
一言礼を言い、逃げるようにして死神の家から出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!