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毎度同じような内容の言い合いを繰り返し、その内に父親は外に女を作って出ていった。 母親は酒に溺れ、毎日違う男を連れ込んだ。俺はその度に家を追い出され、2日帰ってくるなと言われれば言われた通り2日は外でふらついて過ごした。 ある日、母親の機嫌が妙に良かったことがある。新しい男に本気で入れ込んでいたんだろう。その時が一番長く、4日帰ってくるなと言われた。 そして言われた日数が経過した後、家に帰ると母親と男が行為の最中で、もう一度外へ出ようとしたときに男と目が合った。男は子供がいたことに腹を立て、すぐに行為をやめて出ていった。 タオルケットを体に巻き付けながら言う母親の蚊の鳴くような声は、その声量に合わないほどの怒りを含んでいた。 「なんで帰ってきたのよ」 「4日経ったから」 「なんで今なのよ!!」 テーブルに置かれた硝子コップを投げつける母親は、もう正気じゃなかった。俺に股がり何度も殴りかかる母親の心の声は、恒例の「あたしばっかり」 「あんたのせいで幸せになれない!!顔見せんな!!出ていけ!」 母親の口が悪くなったのはいつからだろう。もしやこちらが本性か。だけど、俺は信じたかった。目の前で責め立てる声の裏側に張り付いた、心の声のほうを。 「あんたなんか…!あんたなんか…!」(お腹にいるって分かったとき、産まれたとき…あんなに嬉しかったのに…) 幾度となく顔に落ちてくる母親の涙は、殴られて出来た傷に染みた。だが、それよりも遥かに痛いのはこの人の心だ。いつも葛藤して叫んでいる。 「あんたなんか…っ」(駄目、これだけは言っては駄目、これだけは、これだけはっ…!) 「あ、あんたなんか…、あんたなんかっ!」(あんただけは) (幸せにしたかっ…)「死ねばいい!!」 だから…、 だから俺は、この人の言うことは聞いてやりたくなる。 体の上に泣き崩れる母親を退かし、家を出た。
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