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あーあ俺ってダメ人間。
人間は欲には勝てないことがよく分かった。女に一万円をもらったその日、改めて一日一食おにぎり生活を心に決めたはずがたった3日で使い切ってしまった。
前とは違う公園で水をがぶ飲みして街を彷徨く。そして適当に声をかけられたら迷わずついていく。さすがに今日みたいに男に声をかけられるのは初めてだったけど。
部屋に行くともう一人男がいて、何かヤバいかもしれないとは思ったが、腹が減りすぎて考えてる余裕もなかった。
食事が済むと、シャワーを浴びて促されるまま布団に入る。大体いつもこのパターンだ。ただいつもと違ったのは、今日の相手が男二人だったということだけ。
そしてこの夜、俺はどちらの役も経験することになる。
それからの俺は怖いもんはなくなった。売られた喧嘩は買い、金をもらって男女問わず寝る。
すべては生きるために。…違う、逃げるためだ。
この生活も止めようと思えばやめられたはず。なのにそうしなかったのは、どこかでこれを楽だと感じていた自分が少なからずいたからだろう。
そんなロクでもない生活も1年を越えると、気づけば俺はここらじゃ有名になっていた。リピーターというのもついてきたが、その分敵も増えた。喧嘩を売られることには慣れていたから問題はなかったが、今回ばかりは敵が多すぎた。
あれは金を作るため街をふらついていたときだ。リピーターの一人に声をかけられた。いつもこの男はホテルか自宅かなのに、今日は人気のない公園だった。そしてそこで待っていた男の仲間にボコ殴りにされたのだ。
地面に倒れた俺に、男は聞いてきた。
「他に何人男いんだよ…好きって言ったの嘘か」
好き?馬鹿かこいつ。そんなものセックス前の社交辞令的なものだろう。そんなことも分からないで買いなんてやっているのか。
「ちゃんと言った。今日この時間限定で好きって」
俺も挑発するような言い方やめときゃいいのに。
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