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チクショーあのクソ男。今度会ったらナスビ突っ込んでやる。
待てよ?キュウリのが安いかな?
…
そんなことはどうでもいいはずだ。
この状況でなんでこんなにも冷静でいられるのか不思議だ。
このまま死ぬのかなぁ。
死んでもいいか。
そう投げやりになったとき、聞こえてきたのは落ち着いた低音だった。
(メンドクセェ)
そう聞こえた男の声は、耳に届く声なのか、頭に響く声なのか、もうはっきりと区別がつかなかった。
ああ、死神か。
大鎌持ってるか見なきゃ…。
…
ダメだ…目あかねぇ。超レア物見逃すなんて最悪。
(メンドクセェ)
もう分かったから。面倒臭いばっかやめて。
(限り無くメンドクセェ)
限り無くってどんだけめんどいんですか。
「旅立ちの時くらい愛のある言葉をお願いします」
最後くらい心のこもった一言が聞こえたら嬉しいと本気で思ったから、俺は死神に提案した。
「ここはオーソドックスに愛してるなんてどうでしょう」
「頭大丈夫か」
大丈夫じゃないのはあなたが一番分かってるでしょ?魂回収しに来たくせに何を仰いますか。
「もっと愛ある一言プリーズ」
「救急車呼ぶか?それとも親か?」
ある意味愛ある言葉だけどさ…
あーあ…最後に誰でもいいから、
「抱っこしてほしい」
そう言うと、体が温かいものに包まれてフワッと宙に浮いた。
願いが叶った瞬間だった。これが最後だと分かっていても、涙が出るほど嬉しかったのを覚えてる。
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