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鼻をくすぐる匂いで目が覚めた。
「魚…」
魚を焼いたような匂いに一気に空腹感が増す。
匂いの元に今すぐ歩いていきたかったが、体が痛くてそれは叶わなかった。
それに裸だということも分かって、歩き回る訳にもいかないと思った。
天国でも地獄でもない一室を見回しながら、改めて自分が生きているということを認識する。
見知らぬところに寝ているというのにこんなにも落ち着いていられるのが信じられない。
そして、そんな状況を作り出しているのはきっとこれだ。
死神の匂いのついた毛布。
「死神…」
ポツリと落ちた声に当然返答などない。
この部屋に自分しかいないことが急に心細くなり、毛布を抱きしめた。
「ウソつき…」
ずっといるって言ったのにと、心の中で呟いた。
死神…どんなやつだろう。意識があまりはっきりしていなかったから顔がよく分からない。
そう思ったとき、タイミングよくドアが開けられた。
入ってきたのは自分よりも少し年上ぐらいに見える若い男。
「起きてたのか」
ベッドに腰を下ろす男。
本来ならすぐに礼を言うべきところなのに、まともに顔が見られない。
なぜなら、自分のイメージしていた死神とはかけ離れていたから。
もっと大人だと思っていたし、それに、あそこまでくまなく体を洗われたのだ。恥ずかしくて当然だろう。
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