第1章◇そよ風

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「え、えと私はっ」 あたふたと泥棒ではないと否定しようとしている少女に、男性は微笑みかけた。 「ジョーダンですよ、いらっしゃい悩み相談所(breeze house)そよ風の吹く家へ」 「私はここの管理人をしているものです」 そう言って男性がふわりと笑うと、周りの風景に良く似合っていてファッション雑誌の1ページを見ているようだった。 「あ、えっと」 少女が何か言おうとすると。 「分かっています、ここに来たということは何か相談があるんでしょう」 と男性は少女の言葉を遮った。 「…はい」 「よろしければ、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」 丁寧な口調で話してくれるので、自然と好印象を与えてくれる。 「あっ木幡陽奈(コハタヒナ)です」 「陽奈さんですね、制服を着ていますが、学校帰りですか?」 「はい、部活休んで、その時間使おうと思って」 陽奈はここへ来たことは誰にも教えたくなかった。 だから友達には気分が悪いから帰ると伝えてきたのである。 「そうですか、では今日はあまりお時間はとらないようにしましょう」 「ありがとうございます」 「頼って頂いたからには、嫌な思いはさせませんから、取り敢えず中にどうぞ」 「……はい」 陽奈は管理人と名乗る男性に促され建物の中に入っていった。
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