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「おーい、起きなさーい。」
重いまぶたを上げると、健が覗き込んでいた。
「何?」
時計を見るとあれから10分しか経っていない。
「今、隣同士で意見言い合う時間。」
健が苦笑しながら、黒板のテーマを指さす。
「俺は生命に手を加えるのはいけないことだと思うけど、雪弥はどう思う?」
健は足をぶらぶら揺らしながら、
意見を待っている。
生命に手を加えることに反対しつつ、手を加えられた自分の名前を呼ぶ行為が滑稽に感じられる。
…いや、健が呼んでいるのは自分ではない。
「……もし」
「んー?」
「もし、その技術で病気の家族が救われたらどうする?」
「どうするって?」
「喜ぶ?怒る?」
「もちろん喜ぶ。」
即答した健の顔を見ると、不思議そうな顔をしている。
「なんで怒るんだ?」
「だって、自分が反対している技術が家族に使われるんだよ?」
「でも、助かるんだろ。良いことじゃん。」
「じゃあ、クローンには賛成?」
「うーん…」
この時間が早く終わらないかな、
と悩む健を眺めながら考えた。
今、こうして活動している時間も『雪弥』に用意されたものなのだ。
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