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月が、輝いている。
「だから、前の『雪弥』は劇薬を被ったんだ。」
月に照らされた廃墟の一角。
棄てられた椅子や机、テレビが埃にまみれて転がっている。
僕は静かに告げる。
「この目から、解放されたかったんだ。」
椅子や机と同じように、床に転がったままの友人へ。
動くことを止めた体には、埃の代わりに赤い血が所々に付着している。
彼から少し離れたところには鋏が落ちている。
彼女が使用したのか、持ち手の色が分からないほど血が付着している。
「健も僕と同じだったんだね。」
返事がないのは分かっていても、どうしても声に出したくなった。
「もう一度があると思う?」
返事はない。
「あの人たちはどうしてると思う?」
返事は、ない。
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