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「行ってきます。」
学校へ向かいながら、何も見えない左目に軽く触れる。
『僕』の前の『此木 雪弥』は、
劇薬を顔に浴びて転落死したらしい。
らしい、というのは死ぬ直前の記憶がないから。
それまでの記憶はあるけれど、そこだけ抜けている。
原因として考えられるのは、劇薬に触れて濁ってしまった左目。
どうせなら、傷が付いていない場所を媒体にして欲しかった。
「雪弥の澄んだ目が好きだから。」
以前、両親に眼球を媒体にした理由を聞いたらそう返ってきた。
その理由を聞いてから、
僕はずっと左目を前髪で隠し続けている。
……両親には、右目だけ見ていてもらいたい。
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