歪んだ世界と歪な僕。

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「おはよー!」 ぼんやりと道を歩いていると、 後ろから声が聞こえてくる。 「おはよ。」 声をかけてきたのは、同じクラスの浮田 健。 いかにもスポーツ好きに見えるが 運動音痴の面白い友達。 近くまでゆっくりと歩いてくる。 「課題見して!」 「いいけど。」 遅刻魔の彼が一緒に登校するときは大抵、課題を写させてほしいときである。 「ありがとな。」 「課題ぐらいちゃんとしなよ。」 「病み上がりなのに、  やっている方が異常。」 『此木 雪弥』が死亡したことは 公にされていない。 僕が完成するまでは 原因不明の高熱のために検査入院していたことになっている。 健やクラスの人たちが知っている『雪弥』は、もういない。 けれど、誰もその事に気づかない。 僕が『雪弥』として存在するから。
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