70人が本棚に入れています
本棚に追加
男性が持参したジュラルミンケースから専用のレターセットを取り出す。
世界が『帝央會』の公正さを求めるときに使われる手紙だ。
源一郎が訊ねる。
「略奪を認めんのは理解した……奪い合うだけなら永遠に終わらんだろうしな。だが、その揃えた分はどうすれば良い? 揃えた側の戦力として数えるのか?」
「そう、ですね……一応『戦力』として数えて戴いても構いません。きっと心強い『戦力』となることでしょう」
ーー含みのある受け答えだな。まるで4つ揃えると何かが起こるかのような言い種じゃないか。
ソファから立ち上がり、源一郎は男性と3歩程度の距離まで詰め寄る。
「答えろ。これは、今回の戦争の意義は何だ? 殺し合わせてお前らに何の利益が出る? そして、俺たちが断った場合はどうするつもりだ?」
もちろん、源一郎が戦争を断る理由は無い。
野心家で豪胆、そんな彼がこのチャンスを棒に振るワケがない。
だが、それでもこの大きすぎる疑問は解消しておきたかったのだ。
男性は答える。
「ではお答えしましょう。まず、この戦争の意義は世界の発展に大きく貢献するからです」
「……ほう?」
「いつの時代も、もっとも先進的な技術は兵器に利用され、研鑽(けんさん)されます。包丁が石刀という殺しの道具から産まれるように、化合物が毒の研究の副産物であるように」
「それはこじつけに近くないデスか?」
「しかし国家総出で敵を倒すための研究に没頭します。しかも、互いに。それはいずれ、いくつもの技術革新の始まりをもたらすのですよ」
原子力発電も、元を正せば戦争のために作られた核弾頭に始まる。
最初のコメントを投稿しよう!