開戦

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  「どういう意味よ、それ……」 「簡単に言うのなら、2000年ほど前にも今回のような戦争がありましてね、その際の戦勝国の王が定めた法を扱っているだけなんですよ」 男性は剣の振り心地を確かめながら、 「あぁそうそう、前回の世界戦争を要求したのも『帝央會』です。流石に皆様の文化レベルでは現代まで記録を残す手段が無かったようですが、こちらは数十歩も先を歩いていましたので残せたんですよ」 「2000年前の王が争った結果に現在の法律が定められたのは解った。だが今はもう言葉の壁も無くなり、互いを友好国としている。戦争する理由としては押しが弱いな」 「雷光斎(らいこうさい)の言う通りです。私とテレスが幼い頃から交流があるように、東や南とも関わり合っているんです。……そんな相手と殺し合うなど」 「はぁ……仕方がありませんね」 それは、唐突に起こった。 男性が剣の切っ先で床を数回叩くと、4国の王の胸元から3本の糸が現れた。 「っ……!?」 「ならその縁、断ち切らせて戴きましょう」 振り払われた剣が、それぞれの糸を断った。 それは、俗に言われる人と人の縁。 それは、人と人の間に起こった出来事の記録。 それがーー断ち切られた。 「さぁ皆様、もう1度だけ言いましょう。戦争をして、殺し合って下さい。勝ち残った国には有益な法を作らせてあげます」 「……、」 「……、」 「……、」 「……、」 最初に動いたのは、野心家の源一郎だった。 「恵光を起こせ、栄光を興せ。天の礫は対極をすげ替え壊す!!」 東の神話『神壊録(かみえろく)』が始まる。  
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