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どうやら今朝は不良生徒が耳に空けたピアス用の穴について注意している様子なのだが、残念なことにことごとく話題が逸れていっているらしい。
ちょっと横道に逸れる程度、なんてレベルじゃあない。
もはや、夏のアバンチュールを堪能するべく、可愛い女の子への声のかけ方なんてモノをレクチャーしていた。
そして。
遂に。
「な、なんてことだ……ワルってのは見た目からじゃなく中身からなるモンだったのかぁ…ッ!!」
「解ってくれたか。なら、それで良いんだ。明日からは真っ当な生徒としてこの学校に来い。取り敢えず今日は帰れ。床屋に行ってそのモヒカンを坊主にして貰うんだ」
不良(未遂)くんは、文字通り挫折したのだった。
両膝を熱いアスファルトに突き、四つん這いとなる形で。
「でも、そしたら宿題の提出に間に合わねぇよ……」
「案ずるな、それはこちらで提出しておいてやる。……というか貴様、真面目に宿題をやってきてる時点で不良に向いてないだろう」
「し、仕方ねぇだろ!! ボッチと図書館で交流を深めてたら自然と宿題に手ぇ伸ばしちまうんだから」
「……貴様はとことん不良の才能に恵まれてないなぁ」
この日、1人の不良が更正の道へ歩き出したそうな。
…………。
「俺が代わりにグレてもいい……?」
*
さて、改めて。
大森 司、16歳。
趣味は特に無く、特技は3ケタのフラッシュ暗算が10回足すまでなら出来るくらい。
勉強もスポーツもこれといって他人に自慢出来るレベルではないが、これといった欠点も無い、絵に描いた……いや、才能の類いを色に例えるなら絵を描かれてすらいない真っ白なカンバスに等しい男子だ。
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