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皇族といってもフリフリのドレスは着ておらず、今日はパンツルックの上質なスーツに身を包んでいる。
青い瞳にショートカットにした金髪、可哀想なことに発達の乏しい胸部。
『西の女王様』という肩書きがなければ背の低い優男と思われてもおかしくない容姿をしていた。
「あら、でも昔馴染みなんだから私的な場ではそう呼ばせてよ」
「おっ、お断りです! 私たちはフザケられない立場なのですよ!? 解っているのですか!?」
「ふふっ。もぉ、固いこと言わないの。たまには肩の力抜かないとすぐおばあちゃんになるわよ?」
「心配ご無用。西の皇族は30歳になる手前で自決するしきたりがありますので」
ノーセンキューとばかりに手の平をテレスに向けたアリアナ。
それを見たテレスがガックリと肩を落とす。
「それはそれで寂しいわね。産まれた子どもが成人するまでは一緒に生きたいでしょうに」
「どうせいつか後世の魔術師が呼び戻してくれるでしょうから、大して哀しくもありません」
「その辺って西の降霊魔術の便利なトコよね。1人につき1体の霊を呼び出せるんだもの。実質人口も2倍じゃない」
「代わりに若くして偉業を成し遂げた者は早く殺される運命にありますがね」
西の魔術。
それは死者の霊魂や幻獣などの類いを現世に呼び戻す『降霊魔術』である。
呼び出し方は霊によって様々で、1人につき1体しか降霊させられないのがこの魔術の原則。
原則を破ることも出来ないことはないが、霊たちの思考や意識が混ざり合ってしまわないよう1人1体という原則が存在する。
「ねぇ、ならアリちゃんの遺体は私に貰えない? ちゃんと手入れするから!」
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