開戦

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  胸の前で拝むように手を合わせたテレス。 「……おぞましいことを言いますね」 「大丈夫、『臨界使役』まではやらないから長持ちするわよ?」 「やはり北は恐ろしい国です……」 北の国ーー『ノース』で主に扱われる魔術は従属魔術。 無機物・有機物に干渉し、その構成を理解することで形体を変更させるなどの力を持つ。 ちなみにテレスの場合は強い魔術士の遺体を収集することにある。 ゲテモノ趣味と敬遠されるだろうが、その実は大軍戦闘に必要な駒の収集に過ぎない。 今日も彼女の足許には『お気に入りの遺体』と『使い捨ての遺体』の入った棺桶が置かれていた。 「それ以前に西の皇族の遺体は宮殿地下に埋葬される決まりがありましてね……」 「うーん、それは残念。その様子じゃ遺書に『アリアナの遺体はテレスにプレゼントします』って書いても無効にされそうね」 「向こう10年変わらない返事をするのでこの場でも言っておきましょう。誰がやるかっ!!」 「ちゃんと毎日着せ替えしてあげるのにぃ……」 「死んでるんだから喜びようもないです」 アリアナのスーツを引っ張り、『こんなのじゃなくてもっと可愛いの着せてあげるわよ?』と囁くテレス。 彼女の顔面に拳が叩き込まれたのはこの直後でした☆ 「やれやれ、ご婦人は話に華を咲かせるのに不自由しない生き物なのデスね」 「それだけ『現状』が平和ってこったろ。……だがもうすぐ『帝央會』の人間がここに来て、俺らにこれから始める戦争の必要性を説くハズだ」  
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