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源一郎と言葉を交わし、先ほど『帝央會』の建築技術を世界に流通させて欲しいとボヤいたのは、南の国ーー『サウス』の総統、ボゴラ・オドレイだった。
会合の席にゆったりと座る彼は、他の3国のトップと比べ、かなり奇異な存在なのかもしれない。
生まれ持った褐色の肌はまだしも、その黒さを強調させるような白いラインを化粧として描き、鼻の頭は黒い炭のようなモノが貫通していた。
それどころか、スキンヘッドに剃った後頭部からうなじにかけて幾何学的な模様がタトゥーとして彫られているではないか。
「では、こちらは風習の話ではなく政治の話でもしマスか?」
「止せ止せ。こちとら今日はちょっとした観光気分でこの集まりに出とるだけなんだ。面倒な話は下っ端に任せるべきだろ」
「随分と気楽な王様デスね……今のをアリアナ嬢が聞いたら発狂しかねませんよ?」
「ははッ。西の魔術は感情に左右されにくい体質だ、キレられたところで怖くも何ともない」
「フム、それもそうデシタ」
アゴを撫でると、テレスに対して毛を逆立てるアリアナを見てボゴラは納得。
むしろ感情に左右されやすい魔術を扱うのは自分の国なのだ。
南の扱う魔術は『呪詛魔術』と呼ばれ、その名から想像出来る通り、相手を呪うスタイルだ。
だがしかし、それには平和的な解釈がされている。
そう。
南の呪詛魔術は、『害さえ加えなければ互いに傷付くことのない抑止力』として機能しているのだ。
事実南の呪詛魔術の大半が『術式を組み込んだモノを壊した(傷付けた)場合、加害者にそれ相応の罰を下す魔術』となっている。
故に抑止力。
攻撃さえしなければ、互いが損をすることが無くなるという世界を構築していた。
「お待たせしました」
その一言に、各国の首脳が剣呑な目をした。
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