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「お前には、勇者のスパイをして貰おう」
一仕事終えて、魔王に報告。
そんな俺に言い渡されたのは、その一言だけだった。
「は?いや、意味がわかんねえな。もうちっと詳しく言ってくれや」
手下が魔王に対する言葉遣いでは無いだろうが、今この場にそれを咎める奴はいない。
そもそも、俺と魔王の関係も特殊な物だから本人すら何も言わない。
「簡単な事だ。勇者にそれとなく近付き、その動向を報告しろ。報告にはお前の鳥でも使えば良い」
「いや、そりゃあ構わねえんだがよ。暗殺とかじゃ無くてスパイって、そんな事してどうすんだよ?」
「お前が知る必要は無い。黙って任に就け」
「チッ…わぁったよ!」
イライラする心情を舌打ちに込め、魔王の居室を後にする。
と言っても扉から出るのでは無く、窓から飛び降りた。
ここは魔王城、魔王の寝室。正確には、その外。
五階で、高さは数十メートルにも及ぶが、俺には大した事じゃ無い。
左手のみにある籠手に仕込んだ、アンカーを射出。
適当な取っ掛かりに引っ掛け、落下スピードを緩めて着地。
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