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「痛ってー、普通こういう時は模擬刀とか使うだろ」
「こっちのが痛えっつうの」
ギョッと櫛原は見ると菅城は起き上がろうとしていた。その顔は鼻が折れたのか、若干腫れた顔付きであった。
まだ何かしてきそうな予感がした櫛原は構える。向こうも構える。変わった構え方を菅城はしていた。
「何だその構え?」
「とっておきを見せてやるよ」
腰を低くし、左手を右腕に添えて、右腕は後ろに引いていた。瞬間、櫛原は言いようのない恐怖を覚える。菅城の魔力がグンっと上がったのを感じたのだ。このまま放っておくわけにはいかなかった。
素早くタウロスとの融合召喚の後に距離を詰める。
「喰らえ!」
「遅え!」
両者が振りかぶったところでその間に焔が走った。
櫛原も菅城も思わず身を引く。
「これ以上は……ダメ」
審判であるルーセラが止めに入ったのだ。
納得のいかない表情をする二人に対して彼女は首を横に振る。
「あぶない」
「……どっちがだ?」
「……どっちも」
櫛原の質問に僅かに間をおいてルーセラは答えた。一瞬躊躇うように見えるその間に、櫛原は僅かに自分の方が不利であった事を悟った。
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