299人が本棚に入れています
本棚に追加
残された櫛原は一人呟く。
「ははっ、何だよ……バレバレだったんじゃないか」
頭をかきながら腰をあげる。下を向いたまま、情けない自分を嘲笑った。
「迷惑かけてたんだな。かけたくなかったんだけどな」
櫛原は顔を上げる。そして、ルーセラも菅城と同じように部屋を後にする。もう心配は要らないようだ。今の彼の顔を見て、彼女は少し安心していた自分がいる。
そして、菅城黄月に嫉妬しているのかもしれない。ただ傍観していただけの自分とは違い、櫛原の為に動いたのだから。
ルーセラ・キリ・グレイズ。トランプのメンバーで恵まれた才能を持つ名家の娘。それらを有しながら、櫛原の為に何もしなかった。出来なかった。彼女は自分の舵の取り方を分からない。
ここにも悩む人はいるのだった。
☆ ☆ ☆
その夜、少年はある部屋のドアの前に立っていた。ドアが開き、また別の少年はその少年を迎える。
互いに気まずさと恥ずかしさを秘めながらも、何とか簡単な言葉を口にした。それも二人一緒に。
「ごめん、言い過ぎた」
少しだけ元に戻った気がした。
最初のコメントを投稿しよう!