世界の害。それは

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千条が付けたテレビでは連日の中東アジアでの事が流れていた。中東の連合国が掲げた宣言が世界を震撼させた。 『私たちは“神の福音”と共に歩む事を決定とした』 最近のニュースはこの件ばかりを報道している。流石に見飽きた内容を千条がつまらない様子でチャンネルを切り替えた。 「この“神の福音”って何したいのか俺っちにはさっぱりだわー。ただの宗教団体の割に強力だし」 「『魔法をなくす事』、だろ?」 「だからその理由が俺っちさっぱりだわー」 すっかり勉強の事などそっちのけて、二人の会話は続く。はあ、と集中出来なくなってしまった櫛原は一度シャーペンを置いた。 最近何かと話題になっている“神の福音”。この団体が結成、結束されたのがちょうど櫛原が生まれた年の事である。目的は菅城が言った通り、世界から魔法を無くす事。魔法の歴史を亡くす事でもある。なぜ、彼らは魔法の存在を否定するのか。その理由がまた問題となっているのだ。 「魔法が世界にとって害だから無くすんだろ?」 「お、クッシー勉強はいいのかよ」 「もう休憩でいい、集中出来ん」 ーー“魔法” 昔とは違い、今の世界では当たり前のような存在である事象。 その存在を神の福音は否定する。魔法は世界にとって害だから、と。 魔法が生まれた時、様々な問題が生まれた事が歴史に残っている。あり得ない現象を素直に受け止める事が出来なかった当時の人々の葛藤や苦悩が続いていた。 そして今でも、認知される存在となった魔法だが問題はある。 例えば犯罪がより簡単に、かつ規模の大きい事件が生まれるようになった。武器などいらない、ほとんどの人の体内に宿る魔力さえあれば。
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