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楊鈴は少し面白い事を聞けた。赤鳳学園はもっと殺伐とした軍隊のような所なのかと思っていたが、どうやら色々と学生を支援する方針の所なのかもしれない。
だから、聞きたかった。楊鈴の口が疼いてくる。あんまり下手な事をしてはいけないとわかっていても、聞いてみたかった。
「この学園に利用されてるって思った事なイ?」
本当の声を知りたかった。楊鈴はここが悪い所では無いのかもしれないという期待をこめて。本当に危ない事を聞いてしまっている。もし、夢路が学園の闇の部分の人間だったらどうするのって話だ。
つい、不用心な事を聞いた楊鈴に対する夢路の答えは普通だった。
「利用? そんなの思ったこと無いの」
「……あは、そ~だよネ。私何聞いてるんだロ」
夢路の顔を見る限り、嘘を言ってるようには思えない。
さっさとこの話を終わらせてとっととビルまで帰る事にしよう。時間も良い感じなので、楊鈴は歩き出した。
隣にいた少女はその場から動いていなかった。
「う、ン?」
少し進んでからその事に気付いた楊鈴は振り向いた。夢路はあの場所から一歩も動いていなかった。てっきり、ここでお別れなのかな? と思ったが、違う。
夢路は自分の額に手を当てて苦しそうにしていた。
「え、どうしたノ!?」
慌てて駆け寄った 。近くに来て気付いたが凄い汗だった。
「どこか悪いノ!?」
「……ううん、ちょっと頭が痛いだけ」
ちょっと痛いぐらいの汗の量じゃなかった。夏休みだからか、近くに人は居ない。急いで誰か呼びに行こうとした時、夢路のポケットから着信音が鳴った。
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