プロローグ

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 少女は他を見渡す。  この部屋には自分とシンクの他に二人いる。知ってるのは歳も近いシンクだけ。他はどちらも初めて見る顔だ。片方の顔に刺青が入った男はずっと刃物をイジっている危なそうな奴、もう片方の大男は書類に目を通している。後者は今回の上司かまとめ役って所だろう。 今まで行ってきた“活動”とは違う雰囲気は直ぐに分かった。恐らくそこにいるシンクも同じ事を察しているから落ち着きが無いのだろう。薄暗い部屋の中、自分の名前が呼ばれる。 「楊鈴、シンク・ウィル……松崎藤太。全員いるな、今回の活動内容を説明する」  先ほどの大男は三人に書類を配る。少女、楊鈴(ヤン・リン)はそれを捲りつつ説明を聞く。  内容を見る限り自分たちはとある研究施設の解体を任されているようだ。楊鈴が今まで行ってきた“布教活動”とは一線外れた活動である。 「あの~、解体とは大掛かりに聞こえますけど、この4人で行うんですよね」  恐る恐る尋ねたシンクに大男は頷いた。 「解体となっているが、俺たちがするのはその研究施設に残ったデータを回収するだけだ。手早く済ませる為に人数は抑えてある」 「何でもいいさ! 俺様を雇ったって事は邪魔する奴は殺しても構わねえんだろ?」  楊鈴はいまの松崎という男の発言にギョッとする。  人を殺しても構わないとか聞いていない。 「武力行使は認めてるが、殺すまではこちらの判断で決める。万が一の場合は自身の判断に任せている。しかし、目的の最優先はデータを回収する事を忘れるな」 「う、うン……あとさ、此処って本当に研究施設なノ? 学校じゃなイ?」 「どうも裏に研究施設を隠しているようだ。そこで働いてたと自称する男をこちらで保護している。後に調べたところ莫大な資金が秘密裏で動いている事が分かり、本部でも間違いないとされている。不安なら他にも資料は取っているから見ておくか?」 「いや、イイ」  ふうん、とまだ納得のいってない部分はあるが楊鈴は一応納得する。ついでにもう一度資料に目を通す。日本にあるとは思えない西洋チックな学園の名前を楊鈴は口ずさむ。 「“赤凰学園”……カ」
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