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(携帯電話っ!)
許可も取らずに楊鈴は夢路のポケットから携帯電話を取り出す。そして、着信ボタンを押した。
「ゴメン、今すぐ来てくれなイ!?」
「っとお!? え、誰? どうした?」
電話の相手は男の子。戸惑っている様子の彼に、楊鈴は苛立つ。
「後で言うネ。夢路のお姉ちゃんが大変だから来てくれない!?」
「夢路が? 待ってろ、今何処だ?」
楊鈴は簡単に今居る場所を説明すると、相手の男子学生は近いから直ぐ向かってくれると言ってくれた。
切って三分程待ってると、遠くから走ってくる人影が見えた。どうやら彼が電話の相手のようだ。
「悪い、夢路がどうした?」
「何か頭痛いらしいヨ」
「り、亮介さん……大丈夫なの」
「そうには見えんな。良し、乗れ」
男子学生はその場で片膝を付いて背中に乗るように促した。
「病院まで連れて行く。さっさと乗れ」
「だ、大丈夫な」
「良いから乗りな、ヨ」
グズグズしている夢路の背中を楊鈴は押した。やっぱり優れないのか、夢路は倒れるように男子学生の背中に身体を預ける。
「ありがとう、後は任せてくれ」
「私もついて行くヨ」
ここにきてほっとく訳にはいかない。案内してくれた彼女にまだ礼も言ってない。それに、まだ帰り道を教えてもらってない。
男子学生は一瞬迷うような表情を浮かべたが、とりあえず夢路が優先といった所か、楊鈴にこっちだと言う。
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