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病院は時計台のあった中央部の近だった。最初に時計台に来た時にそういえば見たような気がする。
病院の外で待っていた楊鈴はポケットから自分の携帯電話を取り出した。時間を確認するつもりだったが、先に着信履歴の量に目がいった。
(げっ、シンクから凄い来てル。うわぁ、あいつこういうねちっこい所有るのがウザいんだよナ)
とりあえずメールだけでも送っといておくとしよう。と思った楊鈴はタッチ式の薄型携帯電話のキーを押していく。
ちょうど打ち終わったぐらいで病院のドアから男子学生が出てきた。
「とりあえず心配は無いらしい。ここの医療技術に任せておけば大丈夫だろう。居てくれてありがとうな。えっと、」
「楊鈴ダ。電話の時にキツく言ってしまってゴメンネ」
「そか、俺は櫛原だ。鈴は来年の入学希望者か?」
「うん、そんなトコ。いい学校だネ」
「……そうだな。いい学校だな」
今の櫛原の言い方に違和感を覚えた。どうも本音の言葉には聞こえなかった。
「いい学校じゃないのカ?」
また余計な事を聞いてしまった。だけど、確かめたい。この学校のことを少しでも知りたかった。夢路という少女との関わりを経て、赤鳳学園は悪い所の気がしなかった。
でも、櫛原の表情を見て楊鈴は確信した。
この学園には何かある。
ガッカリだった。その反面、コレで躊躇いなく学園を調べることが出来るだろう。
櫛原に見送られた後、彼女は表情を消した。もうすぐ調査は実行される。学園の秘密を隅から隅まで暴くために。
その背中を見送りながら、櫛原は楊鈴の言葉をもう一度、小さく呟いていた。
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