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あっちへチョロチョロ・こっちでキョロキョロ。夏のビーチを満喫していたようだ。
(そんなピー子は、ボクがそれまで持っていた、ネコに対する固定観念を打ち砕く「個性」を持ったネコだった)。
「もう乗ってるよ」
元々そういったものを持っていたのか?
それとも、この幼い日の体験のせいなのか?
とにかくそれ以来、ピー子は「ドライブ大好きネコ」になってしまったのだ。
窓やドアが開いていようものなら、みずからサッサと乗り込んでは、チョコンと助手席に座って待っている。
(ちゃんと、運転席ではなく、助手席なのだ)。
景色の変化が楽しくて、何でも好奇心旺盛…そんな感じ。
『小さい時から乗せていたから、車に慣れたんだ』
当時は、そう思っていたのだけど…
その後、何匹か、幼い頃から車に乗せてみたが…疲れ果てるまで騒ぎまくるか、あるいは始めからあきらめ切ってグッタリしているか…ダメな子はまったくダメだった。
それに「海」。ある子は、広い浜辺に連れて行くと、ソワソワと落ち着きをなくし、耳を伏せ、身を屈め、たぶん隠れる場所を探してコソコソと走り回る。
『これが「空間恐怖症」というものなのかな?』
「閉所恐怖症」と違い耳慣れない言葉だが、「閉所恐怖症」とは正反対。広い空間に怖れを感じるものなのだ。
(きっと人間だって、大海原や砂漠のド真ん中にいきなり放り出されたら、そんな心持ちになるだろう。そうでなくとも、パッと広がった「海」が視界に飛び込んできた時…「陸地の果ては、この世の終わり」。ここで行き止まりと思うか? それとも、「前途は洋々」。ここから新しい世界が始まると感じるか? あなたはどちらのタイプですか?)。
そういった点で「ピコにゃん」は、いたって面白いネコだった。
残念なことに、近所のネコ(?)との諍いのケガがもとで夭折(「ようせつ」あるいは「ようせい」)してしまったが…
「死ぬ前に、ネコは姿を隠す」という説は、家族の一員となっているネコの場合、まったく当てはまらない。
秋も深まった「あの日」の朝。ピー子は、まるでみんなが起き出して来るのを待っていたかのように、いつもの寝場所…母のフトンの上で、静かに息を引き取った。
(ネコに対する定説で、間違っているものがもう一つ。「道路に飛び出したネコは、後戻りしない」というもの。たしかに、かつてはそうだったかもしれない。でも、ネコだって進歩・前進する。時代に合わせて、変化もすれば、適応もするのだろう。最近のネコは、「ヤバイ!」といった顔をして、ちゃんと引き返すこともある)。
それ以降…
イヌは頭が良いか?
ネコは個性的か?
それがボクの持論となった。
(「ピー子」の名は…その後まもなく、我が家にもらわれてきた秋田犬の女の子に、受け継がれる事になった)。
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