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『火伏せ』のおまじない
「火遊びすると、オネショする」
そんな「ことわざ」というか、「言い伝え」というか…子供の頃、大人たちから、そんな風に言われた事がないですか?
もちろん、ここで言う「火遊び」とは、火を使った子供の悪戯の事。子供だけでの花火や爆竹遊び。タバコを吹かしては、大人に見つかって怒られたり。
(小学生の頃は、タバコは「吹かす物」。「吸う物」だなんて、思いもつかなかったけど)。
そんな「悪さ」をしないようにとの、「戒め」の言葉だと思っていたのですが…。
仕事からの帰り道。ボクは車を走らせていた。我が家が近づくと、あたりは大渋滞だ。
ボクの家は街中にあり、夕方のこの時間、多少の滞りはいつもの事。でも今日は、並の混雑ではない。列を作った車の群れは、遅々として進まない。
『事故でもあったのかな?』
たまにはある事だ。でも…なんだか嫌な予感がする。
ボクの家は、この界隈では「呪われた交差点」として悪名高い、いわくつきの四つ角に建っている。
昔から交通事故が多く、ここで命を落とした人も数人にのぼる。そんな時、我が家の二階は、絶好の見物場所となるのだが…
…夕方の夕暮れ時。あお向けに倒れた、近所の駄菓子屋のオジサン。
(店はオバサンが切り盛りしていたので、まったく面識は無かったけど)。
頭部から側溝に向かって、黒い物が流れていた。
…真冬の早朝。あたりはまだ、真っ暗だった。道路一面に散乱した新聞紙。道のまん中に横たわる、人影とバイク。
(道路を横切ろうとした新聞配達員さんが、両側の車に次々とはねられたのだ)。
…時刻は、ちょうどお昼どき。向かいの花屋さんで花を買った女性が、こちら側の会社で働く恋人に会いに来ようとしたらしい。道ばたで、その女性を抱え、流れる血を懸命に拭き取っている男性の姿。赤く染まったティッシュの束が痛々しい。
(あの時は、なかなか救急車が来なかった。飛び散った花束が物悲しかった)。
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