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たしかに、道路の構造自体にも原因があるだろう。
地下道を上り切った交差点は、山の頂点をなす格好になり、東西の見通しは極めて悪い。
(それに、できたての頃は、二車線で地下道を上って行ったのに、交差点を過ぎると、何の表示もないまま一車線になっている…などという、お粗末なものだった)。
でも、それだけではない。ここに住んでいるボクは、よく知っているのだが…ここでは、故障車の数も、異様に多いのだ。それも決まって、北からやって来た車に限って…。
…夜。オーバーヒートで、ボクの家に水をもらいに来た夫婦。
…日中。ウォーターポンプが壊れて、車屋さんまでの道順を教えてあげた、出張中の営業マン。
…朝。赤信号で止まると同時にエンストしてしまい、歩道でキックを繰り返すライダー。
この近辺で、レッカーで運ばれて行った車は数知れず…。今どきの車が、そんなに壊れるものだろうか?
(だからボクは、一度名のある霊能者の方にでも、この交差点を見てもらいたいと思っているわけだ)。
「ふう~」
多少の渋滞には慣れっこになっているボクだが、ため息が漏れる。今日の渋滞は尋常じゃない。すでに「薄暗い」を通り越していた。
『どうしたんだろ?』
なんだかイヤな予感がする。やがて遠くの方に、回転する赤色灯が見えてくる。
『?』
家が近づくにつれ、胸騒ぎが高まる。こちらの方角からでは、建ち並ぶ家々の陰になって、ボクの住居は見えないが…ボクの家がある四つ角で、たくさんの赤色灯が回転し、物々しい雰囲気だ。
『火事だ!』
薄明かりに浮かび上がる、数台の赤い消防車と、大勢の銀色の耐火服を着た消防士。あたりは一面、水びたし。すべてが済んだ後だった。
「…」
湧き上がる絶望感に、声も出ない。すべては、灰塵に帰してしまったのだ。でもそこで…
『ん?』
目が覚める。
『よかった。夢か』
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