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(当時、そんな言葉は無かった。「フリーのアルバイター」が詰まって「フリーター」になったのだ)。
あの頃は、超「売り手市場」。割りの良いバイトなんて、いくらでもあった。
その後、結婚をするために、7年間ほどサラリーマンをやったものの…「バブル崩壊」とほぼ時を同じくして、「破局」と同時にフーテン暮らしに舞い戻り、はや数年…と言っても、職を転々としていたわけじゃない。
(本当は、そちらの方が希望だったのだが…何だかんだ言っても、どちらかと言えば「古いタイプ」の人間。「義理」や「人情」には弱いのだ。だから、もし次に転職するなら、人間関係の希薄な大きな職場がいい)。
生業は、人材が不足しがちな、どちらかと言えば「職人」的業種。数年間の辛抱の末、そこそこに実力が認められ、何の保障もないけれど、日当はなかなか良い。
(もちろん、これが「本望」ではない。ボクの場合は、夢があっての「その日暮らし」。「昇給」のアテはないけれど、『その日が訪れるまでの辛抱だ』と思っているから、まあガマンもできる。どちらにしたって、ただ流されるままで、環境作りのできない奴は、結局いつまでたっても何もできない。案外そういった連中は、口でウダウダ言うだけで、実は本気で、心底求めていないのだ。たとえば、「金が欲しい」と言う人間は多いが、「じゃあいったい、そのために何かしているの?」と問い質して答えられる人は、まずいない)。
「グダグダ言わず、みなさんは、ガンバッて働いて下さい」
みんながマジメに働いて、「豊かなニッポン」を存続させてくれれば、ボクみたいな「極潰しの道楽者」が生きていける余地やスキマが生まれるわけだ。
そんな時代…だからボクは、今の世の中に、そう大きな不満はない。
「ただいま~」
ドアを開けて、電気を点ける。ボクの家は、駅から歩いて数分。ボロ家だけど一軒家。
「またこれ~?」
玄関先まで出迎えてくれたミーコは、足元で不満をあらわにする。
「ガマンしてよ。パパだって忙しいんだから…」
もう長い付き合いだ。お互い、何を言ってるかくらい、察しはつく。
「え″~!」
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