“Journey Man”

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 ネコだって、10年以上も生きていると、だんだん頭が良くなるものだ。 (一方で、「ボケ」みたいなものもある。ずっと以前、我が家で暮らしていたネコは、晩年、ボケによるものとしか思えない「過食症」になり、ある時期を境に、みるみる(ふと)っていった子がいた)。 「じゃね」  ボクは早々にその場を退散し、フロ場に逃げ込んでシャワーをひねる。 「ふ~」  今日も、やっと一息だ。でも… 『いつまで、こんな暮らしが続くんだろ?』  これはこれで、居心地は悪くない。でも、『いつまでもこれじゃいけない』とも思う。  だいたいボクの夢なんて、「季節労働者」以上にアテがないし、「期間労働者」以上に不安定だ。 『今の仕事で食えているのが、かえっていけないんだ』  ぬるま湯に(ひた)っていると、だんだんと目的意識も薄れていく。  もっとも、若い頃からずっと、「アウト・サイダー」的人生を歩んで来た。 (「アウトロー」=「無法者」ではない。「アウト・サイダー」とは、通常の価値観とは違った生き方をする人々の事だ)。  案外これが、身分相応なのかもしれない。 「カリ・カリ・カリ」  フロ場を出ると、向こうの方で音がする。ミーコもあきらめて、ゴハンを食べてくれているようだ。 「さて寝るか!」  あしたも仕事だ。  ちなみに、“Journey Man”とは、「旅人」の事ではない。 「ジャーニーマン」とは、ボクみたいな、その日暮らしの「日雇い労働者」を指す言葉だ。 (我が家の2階の窓から、当時の駅前方面の夜景) image=458619953.jpg
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