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自然は豊富だったけど、社会からは隔絶されたような場所で、離れた所に住む大家さんは放ったらかし。ネコの一匹くらい、どうって事はない。
名づけの親は、その女の子。それが、「ボクとミーコ」の最初の出会いだった。
「立てば芍薬、座れば牡丹。歩く姿は百合の花」
拾われてきた子なので、素性はまったくわからない。
(昨今の「ペット・ブーム」。でもボクは、そんな「人身売買」みたいな行為はお断りなのだ)。
でも…「高いネコなんだろ?」
近所のおばさんにそう言わしめるだけの、「品の良さ」や「風格」があった。
(立ち姿からして、ガニ股でだらしない野良猫なんかとは「月とスッポン」「雲泥の差」。綺麗に両手の内側を揃えて、シャナリと構える)。
「手前味噌」かもしれない。自分の子は、やっぱり可愛い。でも、それだけじゃない。
物心つく前から犬・猫のいる家に育ち、代々ネコを飼ってきたボクが言うのだから間違いない。この子には、そのへんのネコとは違う、「なにか」があった。
(強いて言えば、おそらくたぶん、他の普通のネコとくらべて、格段に「知能」が高かったんだと思う)。
そんなミーコだが、その「高貴」で「上品」な容姿とは裏腹に…
「キャ~! ネコちゃん」
おもての方で、黄色い歓声が飛ぶ。玄関先からのぞいて見れば、小さな男の子を連れたお母さん。「スフインクス」のように寝そべったミーコは、黙って男の子に撫でられている。
(昔から、意外にミーコは「子供好き」)。
もちろん、相手にもよるのだろうが…黙ってかまわれている事が多い。そんな「余裕」や「ゆとり」もあった。
また、「イヌは飼い主に、ネコは家につく」なんて言うけれど…それから二度ほど引越しを経験したミーコ。この子は、まったく違う土地を渡り歩き、この家で三軒目だ。
何事にも、例外はある。
「ネコは死ぬ前に姿を隠す」などと言われているが、ボクの家で飼ったネコは、交通事故で死んだネコ以外、すべて家で息を引き取っている。
(野良と違って家猫は、どこでもそんなものだろう)。
もっともミーコは、最初の引っ越し直後に家を飛び出し、たぶん土地勘の無い所で迷子になったのだろう。しばらく、行くえ知れずとなってしまった。
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