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しかし数ヶ月後、何キロも離れた郊外の里山の中で発見され、奇跡の生還を果たしたのだ。
(それだけでもドラマになるような、波瀾万丈な「猫生」を送っているネコなのだ)。
今ではボクの生まれ故郷に落ち着いて…この家に連れてきた頃は、もういい歳になっていた。かつてのように、元気におもてを飛び回る年齢ではなかった。
でもかえって、それが幸いだったのだろう。かつてこの家で飼っていたネコの大半は、交通量の多い目の前の道で轢かれてしまったのだから。
(かつて、籠りがちな子が一匹だけ、猫生をまっとうしたけど…「明治生まれ」の祖母に言わせれば、「こういうのが本当のネコ」で、やたらと出たがるのは「ヘコ」って言うんだそうだ)。
そして今では、ボクとミーコの二人暮らし。
「?」
コタツに足を突っ込んで、アレコレやっているボクのお腹にはい上がってきては、したり顔でボクのことを見つめている。
「ネコは目をそらす」なんて言うけれど、そんなのはウソだ。
ミーコも今年で17歳。もう長い付き合いだ。ヒゲやマツゲも長くなり、自慢のジャンプ力も衰えて、もう押し入れの二段目にも飛び乗れなくなったけど…
アパート暮らしの頃のミーコの出入口は、通路に面したトイレの上の、小さな小窓。ボクの顔くらいの高さだから、1メートル70前後だろう。
「すごいでしょ!」
こちらに向かって「Miaou!」。
初めてそこに飛び上がった時のミーコの、自信に満ちた得意気な顔。
そんじょそこらのノラたちでは、そんな高さまでは飛び上がれない。それに小さな小窓なので、開けっ放しで外出しても、「空き巣」の心配もない。それでそれ以来、そこがミーコの出入口となった。
でも…押し入れの二段目を昼寝場所にしていたミーコ。ある日、そこに飛び移るのに失敗。
(動物たちは、つまらない「拘泥」を抱えた人間と違って、「潔」がよい)。
それをボクに目撃されて以来、ミーコがそこに上がる事は二度となかった。
「Miaon~」
あの時のミーコの、さびしげな顔。老いていくのは辛い事だ。
「なんだよミーコ?」
「Miaou!」
忙しい時にかぎって、甘えてくる。
「かまってほしいの」
ネコの「さみしがり」は、いくら甘えても、甘え足りない。これでもかと言わんばかりに、自分の後頭部から額にかけてすり寄せてくる。
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