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「悪かったわよ。だっていきなり後ろから音がしたから…」
こんな鬱蒼とした森の中でなら警戒するのは当たり前だ。
彼女が冒険者ゆえの性、無意識の反応である。
もちろんそれはローグも分かっている。
なので、もうあまり気にはしていないようだ。
「向こうに湧き水があったからさ」
そう言ってローグは手に持っていた水筒をジルに投げて寄越した。
空っぽに近かった水筒に、たっぷりと水が入っているのが重さから分かる。
「ありがと」とジルが呟くように言うと、ローグは目を細めて静かに笑顔を見せた。
「さて、それじゃ、簡単に朝飯にでもしようや」
ローグにそう促され、ジルは軽く頷くとリュックの中から乾燥したパンとアルミホイルで包まれた物体を取り出す。
そして、そのホイル包みを焚火の中に放り込んだ。
このアルミ包みの中には、先日寄った町で分けてもらった野菜やキノコなどが入っている。
手軽に温かい食べ物が食べられる簡単旅人レシピなのである。
今回のものは野菜と一緒に調味料なんかも塗しておいたらしい。
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