Red Hill ~孤独な王女と冒険者~

序

それもそのはず。
今晩は一年に一度のお祭りの日なのだから。

その昔、この広い世界を造ったとされる創造神、双子の女神のアナ・ルシア様とアナ・トリス様のご生誕の日だと世界中に伝えられている。

人々はそんな有り難く清きこの日を『聖・アナの日』と呼んだ。

この世に生を受けたことに感謝し、神を称え、罪を贖い、神の恵みを祈る日なのだ。

だが、そんな聖なる夜もいつの頃からか人々は過ごし方を変えていったようだ。

家族や恋人同士でパーティを開き、プレゼントを贈りあう、そんなお祭りイベントのような日な移り変わってしまっていた。

故に街はいっそう派手に飾り付けられ、子供たちは今夜のパーティとプレゼントを楽しみにし、恋人たちはロマンチックに身を委ねて愛を囁きあう。

そうして毎年、人々は思い思いにこの『聖・アナの日』を過ごしていた。