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ふと視線を上に向けてみると、艶やかに色づいたメインストリートのイルミネーションがキラキラと輝いて見えた。 それは少女にとってまるで自分がお姫様にでもなったかのような錯覚さえ起こさせた。 今年はどんなお料理で、どんなプレゼントが貰えるのだろう。 考えるとこれから待ち受けるパーティに胸が高鳴った。 だって私、いい子にしてたもん。 アナ・ルシア様もアナ・トリス様もちゃんと褒めてくださるはずよ。 そう心の中で唱えると少女の顔は自然と綻ぶ。 こんな寒空の下でも母親を待っている時間など苦にはならなかった。 足元にうっすらと積もった雪が気になり、トントンと踏み固めてみる。 次第に少女の足は軽くリズムを刻むように動き始めた。 誰かが見ているのも構わず、その場でくるくるっと回ってみると、白い息を弾ませた。
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