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だが、ふと少女の目にあるものが留まった。
メインストリートを挟んで向かい側にあるベンチに座った一人の男性。
その男性はこんな楽しい夜だというのに、肩を落として俯いている。
行き交う人々はそんな男を気にするわけもなく、家族と話しながら、また恋人と寄り添いながら通り過ぎていく。
しかし、少女はそんな男性がすごく気になった。
やってくる馬車がないことを確認すると、少女は大通りを小走りに渡ってその男に近づいた。
薄紫色の小綺麗な洋服を着たその男は、近づいてみるといっそう寂しげだ。
俯いていて顔はよく見えないが、父親ほどの年ではなさそうである。
が、その男は少女が近づいてもピクリとも反応しなかった。
まるで周囲の様子など気していないような、いや、周りの喧騒など自身の目や耳に届いていないような。
『聖・アナの日』の賑やかな街中で、この男だけ一人ぽつんと取り残されたような、そんな風に覗えた。
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