第一適応:拉致

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「……」 今僕の頭の中には、どれほどの思考が巡ったのだろう。 僕の人生は他の人に比べたら、よっぽど波乱万丈だと自信を持って言えるが、ここまで理解を超えた現象は初めてだった。 まず目が覚めて知らない部屋だったのも初めてだし、本という本にここまで侵食された部屋も初めてだった。 床が見えないってどういうことだ。 別に雑然と床に捨て置いてあるならまだわかるが、部屋の端から綺麗に本が敷き詰めてある光景には言葉を失った。 謂わば、本の床だ。 几帳面なのだろうけど、バカなのかもしれない。 早々に本の床は見飽きて、この現状について考えてみる。 まず、拉致もしくは、少なくとも自分の部屋からの移動はしたと思う。 こんな部屋は見覚えがないし、自分で移動した記憶もない。 だが、ここで矛盾というか、不思議なことがある。 拉致もしくは、他人に移動させられていたとしても、この部屋はあり得ない。 この部屋には扉がないんだ。 というか、そうなると僕がこの部屋に居ること自体おかしくなる。 どうやって入ったんだ?
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