prologue【真冬の出逢い】

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「ぶぇっくしょい!!」 人目が多いにもかかわらず、大きなくしゃみ。それに反応したのは運悪く、近くを歩いていた1組のカップルだった。 俺の方を見て、ニヤニヤしながらひそひそ話している。 『まさかアイツ1人?』 『うわーかわいそー』 大方こんなとこだろう。 ムカつくけど、自業自得だ。 何せ今歩いている場所は、平日でもカップルで賑わうことで有名な通りだから。 正式な呼称もないから、よく連む友人と2人で『リア充通り』と勝手に名づけたこの場所を、クリスマスイヴなんて日に1人で歩いていたら、そりゃあ話のネタにされるに決まってる。 「……ちくしょう」 仕方ないだろ。ケーキ予約した店ここにあるんだから。 そんなことを考えつつ、右手にぶら下げている袋をなるべく揺らさないように早足で進んでいく。 やがて通りを抜けると、自宅への最短ルートを頭に思い浮かべる。 体も心も寒い。もうカップルに出くわしたくないし……。 さっさと帰ろう。
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