prologue【真冬の出逢い】

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「……気のせいか」 何も聞こえない。 おかしいな、空耳だったのか? 首を傾げ、俺は身震いしながら再び歩き出した。 その瞬間。 「ふざけんなこのアマァ……!!」 今度はハッキリと、男の怒声が聞こえてきた。ビクリとして立ち止まり、もう一度通路に顔を向ける。 ……喧嘩だろうか。 しかし待て、アマって聞こえた気がするぞ。 まさか、女性が絡まれてるんじゃないだろうな。 一度落ち着いて周りを見渡す。 ちょうど今通行人がいなかった。つまり、今の怒声を聞いていたのは俺だけで。 さらに言えば真相を確かめられるのも俺だけ。 「…………」 本当に女性が絡まれてるなら危険だ。不良は怖いけど、パッと確認して通報すれば……。 いやでも、不良同士の喧嘩だったら自分の身に危険が及ぶかもしれないし……。 ああもう、なるようになれだ。 俺は覚悟を決め、踵を返して薄暗い通路に入っていった。
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