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いや、あの、そのね、という風に動揺している先輩。もしかして気持ちが足りていなかったのか。女の人の顔を殴るなんて行為をしてしまったんだから、こんな謝っただけじゃ足りないか。
「本当に申し訳ありませんでした。好きにして下さい。殴っても、蹴っても、僕は耐えます。先輩にした行為の全てを許して貰えなくても、先輩の気持ちが落ち着くなら」
「ちょちょちょ、とりあえず橘君は立って。ほらほら麻里ちゃんに見つかったら」
「見つかったら?」
顔を上げた僕と対面するように立っている中澤先輩の背後にスラリと這い寄る義姉。足音すら聞こえなかった。
「うちの義弟に何をするつもりかな。中澤さん。事と次第によっては……」
何をするんだろうか。義姉のスペックからして完璧なチキンウィングフェイスロックかコブラツイストは確実だろうけど。
「た、橘君。放課後に迎えに行くから。ゆっくり話をしようねえ」
疾風のように消えて行った。あの人は僕を恨んでいるに違いない。入院させられた事に対しての怒りを僕にぶつけるつもりだ。痛みを怖がっている訳じゃないけど、もう精神的に限界で、
プツンと糸が切れた音がして――
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