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それは少し遅刻している以外はいつもと何ら変わらない朝の出来事。
すでに一限目は始まっているので少し早足で教室に向かっている時だった。
「っ!?」
廊下の角を曲がったところで誰かにぶつかり、相手が小さく声を漏らすのが聞こえた。
驚き相手を見ると赤色の長い髪をした私服の女子が俯いていた。
その子の見ている床にはパンが落ちており、ぶつかったところを見るとおそらくパンに塗ってあったのであろうジャムがベトっと制服についていた。
「……ぃ」
小さくなにか呟いた方を見ると俯いていた女子が静かに顔を上げた。
こちらを見るその顔は全体的に整った顔立ちだがどことなく幼さを残している、はっきり言って超美少女だ。
考えて見れば曲がり角での偶然の出会い。これはベタ過ぎるぐらいによくある恋の始まりじゃないか。
ここをスマートに決めればこの女子のルートが……
「許さない……」
少し飛躍した妄想をしていると再び女子が呟くように小さく、しかしはっきりと言った。
そしてこちらをキリッと殺気のこもった目で睨みつけると小さな拳を握り締めた。
「歯ぁ食いしばれぇ~!!」
ドスッ!!
次の瞬間、目の前の華奢な女子からは想像を出来ない重撃が腹部をクリーンヒットし、衝撃で僅かに体が浮き上がった。
心なしか背後の窓ガラスにも衝撃が伝わったようにガタガタと揺れる音がする。
しかも、貫通するべき衝撃の全てを体が受たが如く全身に衝撃が伝わり、思わず口から血反吐を吐いたあと、女子の腕の支えを失いそのまま床に倒れる。
「きったない。アンタの血なんかで汚れちゃったじゃないの。」
女子はそう言って頬についた血を指でピンッと弾き払った。
凛々しいお姉さんや漢がやれば凄い絵なのだがそれを華奢で可愛い系の女子がやるのだからこっちの方がある意味凄い光景だ。しかも異常に様になっている。
「三分の一程度には抑えあげたんだから感謝しなさいよね」
三分一!?あの十トントラックが激突したような一撃を三分一だというのならこの女子の本気は惑星砕きか!?
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