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「帰るか」
ちょうど鳴ったチャイムにふとそんな言葉が口をついて出た。
結羽の言葉が本当なら今の六限終了のチャイム、仮に嘘だったとしてもこんなダルい体で授業なんて受ける気分にはなれない。
幸い欠席も嵩んでないことだし大丈夫だろう。
保健室を出て昇降口に着くと見知った顔と目があった井野上弘太と桑折拓海だ。
二人とも帰ろうしているところを見ると結羽が言ってたことは本当らしい。
俺を見た二人は一緒互いに不思議そうな顔をした。
「よっ」
「お前、今日はサボってたんじゃなかったのか?」
拓海の一言目はいつも通り野次だった。
「ちょっとな」
「ふーん、結羽でも情報のミスってあんねんな。まぁ、今日のノートぐらいは明日見せるよ」
弘太もいつもと変わらない様子で、ただ少し不思議そうにそう言った。
どうやら結羽の話の中では俺はサボっていたことになっているらしいが本当に何があったのだろうか……
「ああ、頼むな」
そして結局何もわからないままその日は帰ることになった……
まさか、この日から平々凡々だった俺の人生があんなドタバタになるなんてこの時はまだ思ってもいなかった……
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