猫の家

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猫に出会った。 小さい段ボール箱に入れられて、僅かばかりの食料だけが端っこに置いてあった。 僕が「そこがおまえさんの家か?」と尋ねると、猫は機嫌悪そうに突然喋り出した。 「そんな訳ないだろ、俺にだってちゃんと家はある!」 僕は猫が喋った事に当然驚いたが、少しその猫に興味が湧き、その場に座り込んで話しを聞く事にした。 「俺の家はそんなに大きくはない、ボロアパートで六畳一間の小さい部屋だ。 だけど、風呂もトイレもあるしキッチンだってある。 駅からも近いのにこれで家賃が四万五千円だ。 良い所だろ?」 猫がそう言い終わると家に招いてやると、僕に抱っこをせがんだ。 仕方なしに抱っこをして、僕は猫が案内する通りに歩いた。 この辺の町は僕も小さい頃から住んでいて地理には詳しい。 猫の案内する先々は僕が見慣れた景色ばかりだ。 「ストップ!」 猫がそう言った目の前には確かにボロアパートがあった。 僕は抱っこしたまま、猫の言う通りに部屋の鍵を開け、猫の家にお邪魔した。 我が家に帰った猫は小さなソファーでくつろぎ出し、お客の僕に 「悪いが冷蔵庫から牛乳を取ってくれ。後、昨日残したサンマもあるからそれも」と、こき使い始めた。 仕方なく言う通り牛乳を取り出し、その辺にあった皿に注いでサンマと一緒に床に置いた。 猫はピョンとソファーから飛び降り、牛乳とサンマを美味しそうに食べ始めた。 「おまえ気に入ったぞ 家来として一緒に住むか?」 猫がそう言うと僕は 「ありがとう」とだけ御礼を言った。 「ピンポーン」と突然家のチャイムが鳴った。 その直後、女性がズカズカと部屋に上がり込んで来た…。 「ああっ!  またそんなの拾ってきて!!」 猫が言葉を失い目を丸くして驚いてる中、僕はその女性に言った。 「違う拾ったんじゃないよ、ここはこの猫の家なんだ」 そう言ってクスリと笑う僕に、彼女は呆れた顔で深くため息をついたのだった。
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