友達がいない人の友達

2/9
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 僕、田沼高明(たぬまたかあき)15歳の部屋はきっと一般的な子供部屋とそう変わらないと思う。ベッドが一つ、本棚が一つ、勉強机が一つ、その上のブックエンドには大小様々な参考書と僕の愛読書が立てられている。  高校に入学したばかりの僕が、机に向かってすることといえば……。 「あぁ? 何をしておるのじゃ! そんな手では負けてしまうじゃろ! まったく、吾(われ)の言う通りにすれば良かろうものを……」  僕の正面で、魔法使いの格好をして二本足で立っている三毛猫が言う。右前足には杖まで持っている。魔法の杖、ロッドというやつだ。 「フッ。ケモノごときがオレの作戦に口出ししないでもらいたい。オレはこれでも真剣に戦っているのでね」  大体、横合いからの助言は反則だ、と、僕の右側で剣を振るのは、栗毛の馬に乗った甲冑の騎士。西洋の鎧みたいなのを身に纏っていて、左手には円形の盾を装備している。  騎士の言葉を受けて、三毛猫が「なにおう! ケモノの何が悪い!」と憤り、喧嘩を始めそうな雰囲気になったので、僕は慌てて二人(?)をつまみ上げて仲裁した。 「止めなよ。ここで喧嘩をしても意味無いだろ? 僕の苦労が増えるだけじゃないか」 「そうですわ。いい加減にしませんと、温厚なわたくしも怒りますわよ?」  僕の意見に賛成してくれたのは、モネの『日傘をさす女』みたいなお嬢様風の女性。僕の左側に立っている。一見清楚可憐に見える彼女におかしいところがあるとすれば、その小さな額にさらに小さな二本の角が生えていることくらいだ。彼女は鬼なのだ。手にはトレードマークの白い日傘を持っている。  僕たちは今、四人でチェス盤を囲んでいた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!