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「ねぇ、シエル。あたしはシエルといられて、ずっと幸せだったよ」
私のマスターは、とても美しく微笑んでおられました。
「マ……スタ……ぁ……」
それなのに、私ときたらただぼろぼろと涙を流しながらマスターを呼ぶことしかできません。
マスターは、そんな私をそっとなでて下さいます。
もう、話すことすらお辛いというにもかかわらず。
「シエル?マスターじゃなくて、ちゃんとリュンって呼んで?」
「は……い。リュンさ……ま……」
「違うよ、シエル。リュン様じゃなくて、リュン」
「……リュン」
私がそう呼ぶと、マスターは満足そうに言いました。
「よろしい。ねぇ、抱きしめて?」
「はい。リュン」
私は涙をぬぐい、マスターの病に侵されすっかり痩せてしまった身体を抱きしめると、マスターは嬉しげにくすくすと笑われました。
そして、私の耳元にそっとささやかれたのです。
「……シエル。愛してるよ。今までも、これからも……ずっと。あたしはシエルを愛してる。今のシエルも、最初に会ったときのシエルも、大好きだよ?シエルは、最初からあたしの大事な大事な、王子様……」
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