1 死にゆく乙女の小夜曲

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「ねぇ、シエル。あたしはシエルといられて、ずっと幸せだったよ」 私のマスターは、とても美しく微笑んでおられました。 「マ……スタ……ぁ……」 それなのに、私ときたらただぼろぼろと涙を流しながらマスターを呼ぶことしかできません。 マスターは、そんな私をそっとなでて下さいます。 もう、話すことすらお辛いというにもかかわらず。 「シエル?マスターじゃなくて、ちゃんとリュンって呼んで?」 「は……い。リュンさ……ま……」 「違うよ、シエル。リュン様じゃなくて、リュン」 「……リュン」 私がそう呼ぶと、マスターは満足そうに言いました。 「よろしい。ねぇ、抱きしめて?」 「はい。リュン」 私は涙をぬぐい、マスターの病に侵されすっかり痩せてしまった身体を抱きしめると、マスターは嬉しげにくすくすと笑われました。 そして、私の耳元にそっとささやかれたのです。 「……シエル。愛してるよ。今までも、これからも……ずっと。あたしはシエルを愛してる。今のシエルも、最初に会ったときのシエルも、大好きだよ?シエルは、最初からあたしの大事な大事な、王子様……」
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