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リュンの瞳にはもう、何も映っていませんでした。
そして、
「幸せ、だよ……?」
そう言って、目を、閉じられました。
「リュン……?」
生体反応、脳波、ともになし。
「リュン……」
リュンは、私の愛しい恋人は、私の手の届かない場所へと旅立ちました。
私は、あふれ出した涙をぬぐい、リュンをベッドに横たえ、まぶたにキスを落としました。
そして、姿勢を正すと最高の笑顔で永遠の眠りについた姫君に言いました。
「今まで、お疲れ様でした。どうかゆっくり眠って下さいね。我が愛しの姫君、リュン」
涙が次々にこぼれて、止まらなくなり膝から崩れ落ちました。
その時です。
不意に、扉が開いて誰かが部屋に飛び込んで来たのは。
「シエル! リュンは……」
飛び込んできたのは、リュンのお父上のエト様でした。
「エト、様…。」
とめどなく涙を流す私を見て、エト様はすべてを悟られたのでしょう。
ゆっくりとこちらへ、眠るリュンに近づいてこられました。
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