1 死にゆく乙女の小夜曲

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リュンの瞳にはもう、何も映っていませんでした。 そして、 「幸せ、だよ……?」 そう言って、目を、閉じられました。 「リュン……?」 生体反応、脳波、ともになし。 「リュン……」 リュンは、私の愛しい恋人は、私の手の届かない場所へと旅立ちました。 私は、あふれ出した涙をぬぐい、リュンをベッドに横たえ、まぶたにキスを落としました。 そして、姿勢を正すと最高の笑顔で永遠の眠りについた姫君に言いました。 「今まで、お疲れ様でした。どうかゆっくり眠って下さいね。我が愛しの姫君、リュン」 涙が次々にこぼれて、止まらなくなり膝から崩れ落ちました。 その時です。 不意に、扉が開いて誰かが部屋に飛び込んで来たのは。 「シエル! リュンは……」 飛び込んできたのは、リュンのお父上のエト様でした。 「エト、様…。」 とめどなく涙を流す私を見て、エト様はすべてを悟られたのでしょう。 ゆっくりとこちらへ、眠るリュンに近づいてこられました。
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