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校舎四階の西端には
図書室がある。
放課後にここを利用する者などほんの僅かだ。
案の定、部屋の前にも人の姿は見当たらない。
(予定通りだ)
約束の時間より十分遅れているけど問題ない。
どうせアイツは遅れて来るのだろうから……
僕はいつも通りの歩調で
図書室の横の階段へ向かう。
目指すは待ち合わせ場所である
三階との間の踊り場だ。
「遅ぇぞ!何やってたンだ!?」
四階から降りかかっていた僕を
Aの不機嫌そうな声が迎えた。
驚いた。
コイツが最後の最後に
時間通りに来るなんて……
不意の事で心拍数が上がったかもしれないが
大丈夫、僕は平静だ。
落ち着いている。
重く感じる右手に持った
布製のペンケース入れを握り締めながら
自分に言い聞かせる。
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