Ⅰ、初めての……

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「何だよ?図書室で俺に何やらせようってンだ!?」 「僕も知らない。先生に呼んでこいって言われたダケで……」 生まれたての小動物のようにビクビクオドオドしながら 僕はAの後方へ視線を向ける。 「あ、先生」 それに釣られて振り向いたAの首を 手にしたペンケース入れで思い切り殴り付けた。 右手に伝わる竹を叩き折った時のような感触。 (折れたかな?) Aは一言も発せず 手摺に倒れかかりながら止まった。 ちょっと見には階下を覗きこんでるようにも見える。 間髪入れずAの膝から下を思い切り抱えあげ 頭から一階目掛け投げ落とした。 鈍い激突音、悲鳴、怒号。 それらを一切顧みず、だが決して急がずに 階段を登り、隣の図書室に入る。 室内には数名の生徒がいたが それぞれが読書や勉強に集中していて 静かに入室してきた僕に注意を払う者などいない。 本棚からお気に入りの外国作家のハードカバー(内容は児童向けに簡略化されて面白味が半減しているが)を手に取ると 空いている席に着く。 外がかなり騒がしくなってきたようだが 図書室はその利用目的上、音楽室ほどではないにしても 防音設備がシッカリしている。 中の生徒が騒ぎに気付くには まだまだ余裕がある。 前後して入室してきた僕と 関連付けられる者など皆無だろう。 いや、それ以前に 入ってきたのが僕だと断言できる者すらいないに違いない。 それだけ自分の存在感のなさに 僕は自信を持っている。
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